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高松高等裁判所 昭和25年(控)208号 判決

被告人

惠比須五郞松

主文

原判決を破棄し、本件を高松地方裁判所に差し戻す。

理由

職権で調べると原判決において、被告人は三井の風呂屋へ殪れ込んだ吉兼を棒で殴ろうとする二、三人の者と共に、バッター様の棒切れをもつて吉兼の頭部を強打し、因つて頭蓋骨粉砕により即死するに至らしめたとの事実を認め、それが刑法第一九九条に該るから被告人を懲役四年に処するとしているが、それによると被告人は他の二、三人の者と共に吉兼の頭部を強打した事実、因つて吉兼は頭蓋骨粉砕により即死した事実は判るけれども、敍上被告人を含め数人のした強打と吉兼の頭蓋骨粉砕との関係詳言すると右頭蓋骨粉砕が敍上数人のした強打のうち被告人のしたそれのみで生じたから責任があるとするのか、或は被告人と他の二、三人の者との強打により生じたものであるが被告人の責に帰する特別事由があつたとするのかが説明されていない、又右判示被告人が他の二、三人の者と共に頭部を強打したとのことは共同し又は共謀しの趣旨(法令の適用に刑法第六〇条の明示を要しないと解して)であるとするにしても被告人と突如現われ殴ろうとする二、三人の者との間における意思連絡詳言すると、どのような意思連絡例えば殺意についての意思連絡があつたのか又あつたとして判示被告人の殺意についてか又は当時の状況から推断できる殺意についてか並にそれが何時何処でできたかゞ判文自体から之を知ることが出来ないし挙示の証拠によつても前提となる説明がない限り敍上の点につき判然と断定できるものも見当らない等結局吉兼の死について被告人に責を帰せしめた理由が附されていないか乃至はその点の審理を尽していない違法があるものと謂わなければならない。

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